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古本屋女房の本とこどもとしっちゃかめっちゃか


by epsilongstocking

旅の恥を描きだす。

さいとう夫婦の「バックパッカー・パラダイス」他のシリーズを3冊、
友達から借りた。
ホントにおもしろい!!
腹抱えて笑って、でも笑うんだけど、視点も変わるし、人生観も変わるわね。
海外旅行経験が皆無に近い私としては。
でもそういうの抜きにしても、キツいユーモアがたのしい。

さいとう夫婦は漫画家夫婦で、共同でバックパック旅行紀を描いていく。
はじめての夫婦の旅は2年半の世界一周旅行で、
強盗やゲリラや交通事故(ほとんど未舗装の山道を全開速度で行く乗り合いバスとか。)の
危険や恐怖、日本では滅多にない熱病などから
スレスレで逃れつつ、
現地の安宿や日本人のたまり場で旅行者達と交流しつつ、
旅人として世界をめぐる様子を
現地の旅行先から漫画に描いて日本の雑誌に掲載している。

まだ20代半ばの夫婦の、いろんな出会いとか、
疑問とか葛藤とか、
一生懸命漫画に描いている。
若くて青くて、無知で無神経で、
そういうつまづきを正直に描いている。
私だって今旅行に出たら、これどころじゃない恥をかき、
迷惑をかけるだろう、と思いながら読むと、
この夫婦に心から拍手したくなる.

インドや南米の話が特に印象的。
貧しい中でしたたかに生きている人びとが活き活きと描かれていて・・・
というよりは、
それらに出会う夫婦の葛藤を通して浮かび上がる、
日本という場所で暮らす私の生き方、在り方。
こわいものみたさ。
そういう気分でこの漫画を見る。
実際旅行をしたこの夫婦も、もしかしたら、
こわいものみたさ、
というものが旅の動機になっているんじゃないだろうか。(はて、どうでしょうな。)

夫婦を通して垣間見る世界は、
ほんとうに多様だ。
トラウマってなんですか。
って言われちゃいそうだ。
すさまじい貧しさの中で、淡々と生きる人びとがいれば、
そういう人々の中から少年を誘拐して兵士に仕立て上げる政府も存在する。
それって理不尽じゃん!
て言っても、実際銃突きつけられてグリグリやられちゃうんだな。
そういう国では、旅行者も強盗殺人の犠牲になるし、
悲惨な死がゴロゴロしている。
それを地獄と、言えるのか?
私は言わない。
この日本で暮らしていても、世界はぐるんとひっくり返って、いつだって地獄になるんだ。
地震、原発、交通事故。
自殺。
理屈も道理も、幻想だな。
私はその思いをあらたにしたよ。
そんで勇気付けられたよ。

これから私は地獄をみるかもしれない。
この国に暮らして。
でも、グレないぞ。
家畜みたいに大人しく屠畜されんぞ。
逃げてかわして、ギラギラした目で生きつづけるぞ。
by epsilongstocking | 2011-11-06 20:17